日本大学生産工学部 環境安全工学科

大学院生インタビュー

大学院生のグループインタビュー

大学院生のグループインタビュー

参加者

(学年、専攻、就職先(卒業後))
生井裕樹さん (修士課程1年、機械工学専攻、日産自動車株式会社)
大森真央さん (修士課程1年、土木工学専攻、茨城県庁)
由井寛久さん (修士課程2年、機械工学専攻、本田技研工業株式会社)
落合麻希子さん (修士課程2年、土木工学専攻、株式会社オリエンタルコンサルタンツ)
志田浩さん (修士課程2年、応用分子化学専攻、カヤク・ジャパン株式会社)

現在所属している研究室と、研究内容について教えてください。

生井さん:所属するゼミを選択する学部3年生のころから現在まで、一貫して秋濱一弘先生の研究室に所属しています。秋濱研究室では自動車のエンジン内部で燃焼がどのように起きているのかを観察し、そこから発生する環境に悪い物質である"すす"を抑制する技術の研究をしています。機械工学ではあるのですが、環境安全とも関係するテーマですね。

大森真央さん

大森さん:学部4年生から五十畑弘先生と永村景子先生のグループ研究室に所属し、現在も引き続き同グループにて指導を受けています。永村先生のもとで持続可能な地域づくり、例えば若者が地域に根付くように地元の高校生と一緒にまちづくりや地域に愛着を持てるような取り組みや、文化的な景観を守る取り組みなどを「実践的な研究(アクションリサーチ)」という形で行っています。

由井さん:生井さんと同じ分野です。学部3年生のときに秋濱一弘先生の研究室を選択し、現在に至ります。研究内容は生井さんとは少し異なり、エンジンで燃焼させたときに"すす"がどれくらい発生するかを予測するための計算モデルの確立、モデルの精度検証と改善をテーマとしています。機械の知識に加え、化学の知識も必要になりますね。

落合麻希子さん

落合さん:学部3年生から現在まで武村武先生の研究室に所属しています。千葉県内にある谷津干潟という干潟を研究対象としていて、生息している生物の増減や水質環境の変化などの原因を追究し、現状を把握するために現地調査と衛星画像を使った解析を行っています。

志田さん:学部生から吉野悟先生の研究室に所属していて、大学院では坂本恵一先生、小森谷友絵先生、吉野悟先生のグループ研究室に所属しています。研究指導は吉野先生から受けていますがグループ内の先生からもよくアドバイスをもらっています。研究内容は新たなロケット推進薬に使用する物質の開発です。従来の推進薬の環境負荷を低減しつつ、より性能のいい推進薬を実現するため、薬品の合成に取り組んでいます。

大学院に進学しようと考えたきっかけは何だったのでしょうか。

生井裕樹さん

生井さん:学部生のころに鉄道会社やインフラ関係の企業を希望して就職活動をしていました。けれど、それは鉄道やインフラに興味があったわけではなく、安定していそうだから、大きな企業だからという理由でした。ある時、このままでは自分の軸となるようなものもないまま、ただなんとなく過ごしてしまうのではないかと思ったんです。進学することで自分のことをもう一度考え直し、本当に興味があることを見つけようと考えました。結果的に、進学したおかげで、現在の研究テーマにもめぐり合うことができました。

志田浩さん

志田さん:環境安全工学科では学部3年の冬に企業を招いての説明会が開催されています。説明会に参加することで、具体的に企業で働くことをイメージする機会にはなったのですが、自分は話を聞いていく中で「就職しても研究をしたい」と考えるようになりました。企業で研究職に就くためには、やはり大学院に進学する必要がある。それに、まだまだ化学についての学びを深めたいという希望もあり、本格的に就職活動を始める前に大学院進学を決めました。

由井寛永さん

由井さん:自分は大学入学時から、漠然と大学院進学を考えていました。企業で研究開発に携わって、世の中の役に立つ製品を作りたいという希望があり、学部1~2年生のころから、先生方に「環境安全工学科だと大学院はどうなるんですか」と質問していました。大学院生産工学研究科の各専攻に行けることを知り、自動車やエンジンに興味があったので、機械工学専攻を選んで進学しました。

研究を深めるという意味では他大学の大学院への進学も考えられますが、生産工学部の大学院に進んだのはなぜでしょうか。

大森さん:今取り組んでいる研究は私が学部4年生のころから関わっているプロジェクトで、このプロジェクトに継続的に参加したいという希望があり、同じ研究室に所属する必要がありました。研究内容は土木分野からはやや外れていて、むしろ社会学などに近いものなので、他の研究者の方から「なぜここで研究を?」と聞かれることも多いのですが、私自身は土木的な観点からも地域づくりに取り組む必要があると考えています。そんなアプローチができる場所が、生産工学研究科だったという理由もありますね。

由井さん:環境安全工学科では学部2~3年生のころに行う学生実験で、学科を卒業した大学院生がティーチングアシスタントとして参加しています。自分が参加したのは機械系の太陽電池に関する実験だったのですが、アシスタントとして教えてくれた院生は土木系の人でした。専攻に捕らわれず、土木系の人が機械系の実験を教えてくれるという幅広さは環境安全工学科の研究室のオリジナリティだと思います。自分も生産工学研究科に進学し、専攻に留まらない多方面の分野を後輩に教え、学べる人間になりたいと考えたことが大きな理由です。

落合さん:学部生のころから調査を続けてきた谷津干潟は国が指定した保護区になっており、簡単に立ち入ることはできません。調査のためにはさまざまな許可を申請する必要がありますが、そのために不可欠な人とのつながりは私の先輩方が築いてきたもので、別の大学や研究機関で簡単にできることではありません。さらにこれまでに蓄積してきた過去のデータもあり、学外で研究を続けるという考えはありませんでした。現地調査と衛星解析の両方を手掛けることができるのは武村研究室の特徴でもあり、武村先生のもとで2年間研究を続ければ、何か得られるのではないかという思いもありましたね。

大学院で研究を深めていくことの面白さは、どんなところに感じていますか。

志田さん:自分のテーマは今まで誰もやっていないこと、新しいロケット推進薬を作ることなので、まだ存在しないものを自分が作っているという充実感はとても大きいですね。先輩たちがやってきた先行研究よりも良いデータを得たり、さらに研究を進めることができると、自分が意味のあることをできたという満足感もあるかもしれません。大学院修了後は火薬業界の企業で研究を続ける予定ですが、企業での研究にはどうしてもコストバランスが求められ、できない研究も出てきてしまいます。大学院では多少コストが発生しても、取り組める研究の幅が広い。大学院は自分のやりたい研究を実現できる最高の環境です。

由井さん:学部生のころは研究室に所属していても、先生や院生に言われたことをこなして結果を出すのが精一杯。でも、大学院に進学すると学部で積み上げてきた知識や経験の結果が表れて、次に何をすればもっと良い結果を出せるのか、どうすれば結果を強調できるのか、といったことが考えられるようになりました。学部生のころは考える余裕がなかったけれど、今は自分で考えて実行できることがすごく楽しいと感じています。さらに大学院では自分が考えて出した意見を学会で発表し、その意見に対する他の研究者の考えを聞くことができる。こんなに楽しい経験ができるのは、大学院ならではです。

生井さん:学部生のときは「研究はひとりでやっていくもの」というイメージがあったんですが、大学院に進み本格的に研究を行うようになると学会や他大学との共同研究などを通して、多くの人の意見に触れることができました。他の研究者たちがどれほど苦労して研究を行っているかはもちろん、「そんなところに目をつけたのか」と自分の研究にもプラスになる新たな視点も得られ、自分の成長にもつながったと感じています。ただ2年間余分に研究ができるだけではない、内面の成長機会もある貴重な時間だと思います。

大森さん:私が今取り組んでいる「地域づくり」という研究テーマは、どこかの企業に就職してもそのまま継続できる性質のものではありません。研究は学部4年生のころにもできますが、地域づくりプロジェクトというものは1年だけで成果がでるものではありません。継続的に取り組み、前年の結果を踏まえた改善などもしつつ、ようやく少し前進する。一定の期間きちんとプロジェクトに参加できる環境でなければ意味がないんです。学部生のころだけでは完結できないような研究でも、時間をかけて達成できる場が大学院ではないでしょうか。

落合さん:社会に出て会社で働くようになれば、たとえ研究職であっても自分のやりたいことにだけ没頭するわけにはいきません。けれど、大学院では2年間自分で選んで決めたひとつのプロジェクト、テーマについて、それだけを考えられる時間に費やせます。これは学部生であってもできないことで、すごく幸せで大きな意味があることだと思います。さらに、後輩への指導など一定の責任も求められる。自分がやりたいことと社会的な責任の中間に位置するような、人生の中でも特殊な時間を過ごすのが大学院だと感じています。こんな豊かな経験が得られる環境は他にはないと思いますよ。

大学院生のグループインタビュー

修士2年生の皆さんの、大学院修了後の進路をうかがえますか。

落合さん:建設コンサルタントに就職することが決まっています。河川・海洋工学という領域で事業を展開している企業で、河川整備や海岸線の保全のために護岸の整備、上下水道など、水に関係した公共設備に携わることができるので、研究で培った知見をもとに仕事に取り組むことができます。

由井さん:自動車メーカーから内定をいただいています。一括採用なので、(2月現在)開発や生産技術、あるいは設計なのか、どのような業務を担当することになるのかはわかっていませんが、研究の延長線上に位置するような、学んだことを少しでも活かせる業務に就ければ嬉しいですね。

志田さん:火薬業界の企業から内定を貰っていますが、火薬学会にも在籍し続け、この分野で研究を続けていく予定です。広い分野ではないですが、その分研究を通じたつながりは強く、ほとんどの研究者が知り合いのような状態です。時には批判を受けたり、それに対して研究の意義を説明したりと、常に切磋琢磨し続けられる環境でもあり、これからも自分自身の研究者としての能力を高めていければと思います。

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