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教員からのメッセージ 斎藤 郁 助教
教員からのメッセージ
誰にも負けない分野、自分の強みがあれば恐れることはない。
助教 齋藤 郁 Iku Saito
私が担当する授業は、熱エネルギー概論と設計工学です。「カーボンニュートラル燃料の燃焼および排出ガス浄化技術に関する研究」を研究テーマにしています。
2024年に日本大学で教鞭を執ることになりましたが、その前は日野自動車で、エンジン・排出ガスの研究に携わっていました。
自動車に興味をもつきっかけは日本大学機械工学科4年生の時、大手自動車会社との共同研究に参加したことです。排ガスも含めた燃焼研究を大学院時代を含めて3年間手伝いました。そのような経験があったので、さらに研究したくなり日野自動車に就職しました。
技術研究所に配属され、排出ガスをメインに研究することになりました。ディーゼル車は年々規制が厳しくなっていて、10年、20年先を見据えて対策を考えていましたから、既存の技術だけではうまくいかない。触媒メーカーやマフラーメーカーなど多くの方たちの協力を得ながら、それをエンジンに取り付けては排出ガスのチェックをしていました。"エンジンベンチ"というエンジンを回す専用の実験ルームがあるのですが、来る日も来る日もそこで実験を繰り返していました。排出ガスに含まれるNOx(窒素酸化物)を分解する働きのある尿素を噴射する制御系を変えたり、触媒変えたり,エンジンの制御を変えたり......、条件を変えて比較試験をしていました。
研究というのはうまくいったとしても製品化されるのは1~2割でした。ほとんどは、コストや生産性との見合いで却下されます。ただ、うまくいかなかったとしても、何かしらのフィードバックが得られて、それが次に進む糧になるので徒労だとは思わなかったです。研究が好きということもありますね。自分が希望する研究を提案して認められたら、会社から研究費の提供を受け、実験することが喜びだったのです。
8年間、日野自動車で研究しましたが、後半4年間は働きながら母校のドクターコースで学びました。2023年4月に博士号をとり、縁あって2024年に母校で教鞭を執ることになりました。
研究分野は、これまでのベースを生かすべく排ガスと燃焼です。新燃料の研究にも取り組んでいます。ひとつは社会的関心の高い水素燃焼。水素は燃えすぎてしまう面もあるのでそれをどう抑制するかがポイントです。触媒と燃焼を組み合わせる実験をしています。あとはe-fuelなどの合成燃料の基礎研究にも携わっています。
久々にキャンパスに戻って学生と話していて感じるのは、発想の面白さですね。中に"オッ"と思うユニークなアイデアもあるんです。失敗してもいいから、どんどんチャレンジしてほしい。実験をする過程で学ぶことは必ず役に立ちます。
私は8年間、社会経験を積みました。ですから大学の学問・研究と企業とを繋ぐ役割を果たせたらと考えています。例えば、企業に入って大切なのはコミュニケーションです。PDCA(plan,do,check,action=計画、実行、評価、改善)も重要です。PDCAのような基本的なことについては、卒業研究の時にある程度できるようになっておけば、就職してから役立つだろうと思っています。
また、日野自動車は私が在籍した当時はトヨタグループでしたので、このときにトヨタの「問題解決の8ステップ」という手法を叩き込まれました。問題を見える化するところから解決を図り、再発防止にも繋げていく手法なのですが、当たり前のことを地道に手を抜かずに取り組むことの大切さが詰まっています。将来、生産現場や研究開発分野に行っても役に立つので、これも学生の皆さんに伝えています。
「オリジナルな実験装置で世界初の実験をする」。自分たちがやりたい実験をやるためには実験装置もつくります。これはわれわれの研究室のキャッチコピーです。大学の恩師の哲学でもありますが、たとえニッチであってもそこにオリジナルなものがあれば、どんな世界に行っても勝てると思います。就職すれば社内だけでなく、他社にはすごい能力をもった人がたくさんいる。でも誰にも負けない分野、自分の強みを持っていれば恐れることはありません。私も他社の人たちと研究発表した際、そう感じたことがあります。自分の頭で考えて、率先して実験に取り組む。そういう積極性を持った人にぜひ本学に来てほしいと思います。
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